
宮崎駿の描いたマンガが収録されているというので、興味を持ち読んでみた。
巻頭と巻末に「雑想ノート」形式のフルカラーマンガが掲載されている。
駿については後述するとして、まずは本題の小説について書く。
この本には中編?の『ブラッカムの爆撃機』の他、短編の『チャス・マッギルの幽霊』、『ぼくを作ったもの』が収録されている。
『ブラッカム。。』はWW2のRAFウェリントン爆撃機乗りの話で、他二編はいずれも戦時下の少年の話である。
宮崎駿も書いているが、『ブラッカム。。』の描写は元爆撃機乗りなのかと思うくらいリアリティがある。
単なる戦記ものとは違い、兵士の息づかいまでが感じられると言ったら良いだろうか。
その描写は主役とも言えるウェリントン爆撃機だけにとどまらず、航空兵の生活振りや被服にも及ぶ。
軍装マニア的に言えば、航空兵の着用している「ウサチャン服」RAFアービンジャケット(毛皮のシャーリングジャケット)や酸素マスクの表現などは、実際に見たり着たりした者にしか判らないような描写なのである。
これらを全て想像で書いたのだとすれば、非常に研究した結果なのだと思う。
この辺りは単なる戦記ものや、うわべだけで書かれた安っぽい架空戦記ものと一線を画している。
更に視点は敵であるドイツ人にも及んでいる。
メインはイギリス人の話だが、ドイツ人にも視点がある事で映画『空軍大戦略』的ニュートラルさが感じられる。
この点は、あくまでドイツ人の視点のみで書かれたルーデルやリッペルトの自叙伝などとは違っており、なかなか興味深いものがある。
当事者でない事から書けたのかも知れない。
この話は解説を読む限り、児童小説として書かれたものらしい。
私が子供の頃読んだとすれば、それはそれで面白く読めたのかも知れないが、中年となった今読んだ方が良かったのかも知れない。
それは機体や軍装の知識のついた今ならリアルに思い描けるという事もだが、作品のテーマ自体も深いように思うからだ。
これは『チャス・マッギル。。』や『ぼくを作ったもの』にも言える。
共に第一次大戦の英国兵が絡んでくる。
前者はファンタジーっぽい話だが、やはり描写がリアルである。
第二次大戦期に少年だった著者の経験も元になっているのだろう。
収録されている三作品とも面白く読めた。
(面白く=面白おかしいという意味ではない、念のため(笑))
戦記ものに興味のある方にはオススメしたい本である。
画像はWW2の英軍(手前)とベルギー軍のヘルメット。
『ぼくをつくったもの』の「おじいちゃん」の話にある、ヘルメットてっぺんのネジを指す。
第一次大戦の英軍ヘルメットとは内装が異なるが、やはり内張りを固定する為のネジがてっぺんにある。
「おじいちゃん」はこのネジを外し、釘をさしてロウソクの台としたのだろう。
さて駿について。
巻末のマンガを読み、宮崎駿の意識が変化してきているのでは?と思った。
こんなセリフを妄想上の(笑)ウェストールに語らせている。
「(英国の航空兵や日本の特攻隊員の)・・・少年の忠誠心を否定してはいけません」
「煽ったり利用したりするのは もちろん論外ですが 少年達の勇気は、本来悲劇的なのです」
「しかし この世界の重要な一部です」
巻頭では自らのキャラに、こう言わせている。
「なんとまあ より道をしたものだと思う」
ウェストールの『機関銃要塞の少年達』や『海辺の王国』を読んだ時に気づいた
「ぼくより先を歩いている奴がいる」
現在宮崎駿が製作を開始している新作は、戦が絡むか絡まないのかすら判らないが、結構良いものに仕上がるのでは?
などと勝手に妄想している私ではある(笑)。
P.S. どうでも良い瑣末な事だが「火炎信号」は単なる「信号弾」で良いのにね(笑)。
おそらく原語はフレアーなのだろうが、ディープパープルの「スモークオンザウォーター」の歌詞訳も含め、ちゃんと訳されない事が多いような気がする。。